ドラッグストア銘柄の比較分析【2018年7月】

今回はドラッグストア業界を取り上げて比較分析したいと思います。

2012年頃から業界全体が上り調子で、スーパーやコンビニ等から顧客を奪いつつ、店舗拡大で成長してきました。

小売業の中でも、全体の中でも、高評価・高パフォーマンスを見せている業界の1つなのではないでしょうか。

とは言え、個別銘柄の間では違いもあるもの。

そんなドラッグストア業界について比較分析をご紹介します。

スポンサーリンク

ドラッグストア業界の比較分析

分析対象

今回の比較分析の対象は15銘柄です。

ツルハHDウエルシアHDマツモトキヨシHDサンドラッグコスモス薬品スギHDアインHDクスリのアオキHDクリエイトSDHDココカラファイン薬王堂Genky DrugStoresカワチ薬品キリン堂HDサツドラHD

ドラッグストア業界の上場企業はほぼカバーできているかと思います。

利用データについてはページ最下部に表で掲載しています。

勢力図

いずれのドラッグストアも地盤を持ちながらエリアを拡大しています。

15のドラッグストア銘柄の勢力図をまずは確認しておきましょう。

ドラッグストア 勢力図 全国

やはりと言うべきか、激戦区は関東です。

関東を地盤としながら、マツモトキヨシHDとサンドラッグはM&Aも含めて全国展開しています。

ウエルシアは意外にも全国展開はしておらず、中部・関西まで西進している程度で、東北方面の店舗数は少ないです。その理由として考えられるのは、北海道から南下して中四国まで展開しているツルハHDと同じイオン系列として住み分けをしているからかもしれません。

その他は比較的小さめながらも、神奈川地盤のクリエイトSDHDや栃木地盤のカワチ薬品、関東のセイジョーを要するココカラファインがいます。

また、南に目を転じると、コスモス薬品が中部まで東進しています。

そして現在の激戦区は中部とも考えられます。コスモス薬品が南から、ウエルシアが東から攻め込んできており、中部・北陸が地盤であるスギHD、クスリのアオキHD、Genky DrugStoresもエリア拡大しており、群雄割拠といった状態です。

※ココカラファインは中部に置いていますが、実際には関西と関東の離れた地域同士の統合でで生まれた企業です。

逆に、手薄となっているのは東北・九州です。

東北を埋めるように薬王堂が着々と店舗を増加させており、九州はコスモス薬品の地盤です。

市場評価

現在の市場からの評価としてPERとPBRを見てみます。

縦軸がPER(今期予想)です。

横軸がPBR(前期実績)です。

ドラッグストア PBR PER

PERでは測れない銘柄

サツドラHDは、固定資産の減損により純利益が押し下げられており、結果的に高PERとなっています。PBRで1倍前後というのが実力の評価と思われます。

その他は概ねPBR評価とPER評価が比例している状態です。

高評価(割高)な銘柄

グラフの右側にあるクスリのアオキHD、ウエルシアHD、コスモス薬品、薬王堂は高い評価を受けています。PERは30倍前後、PBRは4倍以上ということで、2桁成長は当たり前で年率20%以上の成長を期待されているような印象です。

第2グループとして、アインHD、ツルハHD、サンドラッグも比較的高い評価を受けています。

低評価(割安)な銘柄

グラフの左下側にあるカワチ薬品、ココカラファイン、キリン堂HDは低評価となっています。

規模も小さめで成長余地もありそうですが、逆に大手には勝てないという評価なのかもしれません。

自己資本利益率(ROE)

次にROEとPERで見ていきたいと思います。

縦軸がPER(今期予想)です。

横軸がROEです。

ドラッグストア ROE PER

特損で純利益が落ち込んでいるサツドラHDと、苦戦が続いているカワチ薬品は、ROE5%以下とドラッグストア業界平均からは引き離されています。

この2つを除外して他を見やすくしてみます。縦軸・横軸は同様です。

全体的にドラッグストア業界は高ROEとなっており、高評価なのも納得できます。

ドラッグストア ROE PER

ROEとPERは概ね正の相関があると思われます。

高ROE銘柄

飛び抜けているのがクスリのアオキHDです。ROE22%と効率的に稼いでおり、地盤の北陸からエリア拡大して関東にも進出してきており、成長余地も大きいと思われます。それを反映して高PER評価されています。

他には、コスモス薬品と薬王堂が高ROEで高評価されています。両者とも食品主体でローコスト運営で成長が期待されています。

逆に、サンドラッグは高ROEながら比較的低いPER評価となっています。

低ROE銘柄

キリン堂HD、ココカラファイン、スギHD、マツモトキヨシHDあたりは比較的低ROEとなっています。

マツモトキヨシHDは一昔前は業界トップでしたが、ツルハ、ウエルシア、サンドラッグに抜かれており、勢いがありません。

自己資本比率との関係

ROEの見方を補足するために自己資本比率との関係も見てみます。

縦軸がROE、横軸が自己資本比率です。

ドラッグストア ROE 自己資本比率

高ROEのクスリのアオキは自己資本比率が低く、上手くレバレッジを効かせて稼いでいる印象です。コスモス薬品や薬王堂も同じ傾向です。

逆に、マツモトキヨシHDやスギHDは自己資本比率が高いがために、ROEが低めになっており、慎重な経営姿勢が伺えます。

サンドラッグは高ROEと高い自己資本比率を両立させており、非常に高い経営力だと思われます。

営業利益率

薄利多売の小売業において営業利益率は非常に重要な指標です。

また、ドラッグストア業界においては、主力商品によって利益率も変わってきます。食品の販売比率が大きいと低利益率に、薬や化粧品の販売比率が大きいと高利益率になります。

それでは全体を見てみます。

縦軸がPER(今期予想)です。

横軸が営業利益率です。

ドラッグストア 営業利益率 PER

ROEと同じく、サツドラHD、カワチ薬品が低い営業利益率です。今回はそこにキリン堂も加わってきます。

この低いグループを除いて、他を見やすくしてみます。

ドラッグストア 営業利益率 PER

営業利益率とPERも概ね正の相関があると思われます。

高利益率銘柄

ダントツなのがアインHDです。ただし、アインHDの主力は調剤薬局であり、ドラッグストアの展開は小規模です。門前薬局首位として高い利益率を誇ります。

次に営業利益率の高いグループは、サンドラッグ、ツルハHD、マツモトキヨシHDです。規模も大きく、薬や化粧品主体の販売で高利益率です。

中でもサンドラッグは高利益率ながら、比較的低PERな評価となっており、ツルハHDくらいの位置までPERが上がっても良いのではないかと思われます。

利益率銘柄

ココカラファインが一歩遅れをとっています。ここは販売比率というよりは、統合によって生まれた後に統合効果を上手く出せないでいる印象です。

ウエルシアHD、コスモス薬品、薬王堂も低利益率です。ウエルシアHDはM&Aや新規出店で急成長していますが、利益が追いついてきていない状況です。コスモス薬品や薬王堂はローコスト運営で低価格販売がウリなので低利益になっています。

一方で、この3社のPER評価は非常に高く、今後の成長が期待されていることも分かります。

コスモス薬品や薬王堂と同じ路線なのがGenky DrugStoresなのですが、利益率が少し勝っているものの、PER評価は大幅に低いです。

ドラッグストア個別銘柄ピックアップ

以上の比較分析から、期待の銘柄をピックアップしたいと思います。

成長期待銘柄

戦略的に営業利益率は低めながら、高ROE経営で成長が期待されるのは、コスモス薬品薬王堂です。地盤が九州と東北ということであまり競合他社が居ないのも良いですね。

もう1つ成長が期待されるのは、ウエルシアHDです。現段階のROEや営業利益率はイマイチながら、イオンの連結子会社としてM&Aと新規出店で高成長が期待されます。

上記3社は成長期待の表れとして、既に市場からの評価も高く、高PER・高PBRとなっています。

割安銘柄

直近で株価下落して指標的に割安になっているサンドラッグは、ROEも営業利益率も自己資本比率も高く、優秀さが目立ちました。

1桁成長では物足りないということで決算後に売られましたが、経営力の高さや連続増配を考慮すればPER20倍付近は割安ではないでしょうか。

ダークホース的にはGenky DrugStoresも面白いです。ROEも営業利益率もそこそこであり、グループ的にはコスモス薬品や薬王堂に加わっても良いと思います。

惜しむらくは中部・北陸で戦っていることです。クスリのアオキHDという成長銘柄と、高い自己資本比率で安定経営するスギHDが競合となってきますので、非常に厳しい戦いが想定されます。そのため、PER評価が低くなっているのではないかと思われます。もしこれらに打ち勝っていければ評価は一変する可能性もあります。

割高銘柄

正直、特にありません。

業界全体が好調であり、注目を集めている業界なので、割と納得できる正しい評価がなされている印象です。

クスリのアオキHD、ウエルシアHD、コスモス薬品、薬王堂は高い評価を受けており、PERは30倍前後、PBRは4倍以上ということで指標的には割高感はあるものの、それだけ成長できると期待もあります。

一発逆転銘柄

カワチ薬品は業績苦戦でPBR1倍割れの評価となっています。激戦の関東で戦っていくには厳しいかもしれません。

だからこそ逆に、大手からM&Aされる可能性もあると思われます。

イオンのバックアップを受けて関東で盤石の体制を敷くウエルシアHDか、資金十分のサンドラッグあたりでしょうか。

まとめ

業界比較分析として、食品スーパー、リユースときて、3回目にドラッグストアを取り上げてみました。

なんというか、ずば抜けて強い銘柄もなく、ずば抜けて割安な銘柄もなく・・・。

「業界全体が好調であり、注目を集めている業界なので、割と納得できる正しい評価がなされている印象です。」と書いた通りな気がします。

ドラッグストア15銘柄ということなのですが、非上場のドラッグストアもまだまだありますし、M&Aによる業界再編は今後も続くものと思われます。

過去にトップだったマツモトキヨシHDが抜かれたように、盛者必衰の資本主義のもと、今後も熾烈な競争が続きそうです。

利用データ

2018年7月27日時点の数値を用いています。時価総額順に並べています。

PERは今期予想(yahooファイナンス)です。

PBR、ROE、営業利益率、自己資本比率は前期実績値です。

グレアム係数は、PER×PBRです。

銘柄名から本ブログの個別分析のページも確認いただけます。

銘柄 PER PBR グレアム係数 ROE 営業利益率 自己資本比率 時価総額 地盤
ツルハHD 27.0 3.6 97.04 13.7% 6.0% 56.2% 6,989 北海道
ウエルシアHD 32.5 4.7 152.38 14.0% 4.1% 44.3% 6,216 東京
マツモトキヨシHD 22.1 2.6 58.26 11.7% 6.0% 65.0% 5,584 関東
サンドラッグ 20.3 3.5 70.5 17.1% 6.4% 62.7% 5,501 東京
コスモス薬品 28.3 4.6 129.43 17.5% 4.1% 43.4% 5,038 九州
スギHD 23.2 2.4 55.17 10.6% 5.4% 63.8% 3,876 東海
アインHD 32.2 3.1 99.18 13.5% 7.3% 52.7% 2,983 北海道
クスリのアオキHD 29.4 6.2 181.88 22.1% 5.4% 37.6% 2,737 北陸
クリエイトSDHD 18.3 2.6 47.29 14.5% 5.2% 57.1% 1,895 神奈川
ココカラファイン 15.8 1.9 30.22 10.6% 3.5% 55.5% 1,778 関東・関西
薬王堂 26.4 4.5 119.02 18.7% 4.2% 47.7% 776 岩手
Genky DrugStores 17.6 2.6 45.64 13.1% 4.4% 39.6% 617 福井
カワチ薬品 12.6 0.6 6.94 4.3% 1.7% 50.1% 544 栃木
キリン堂 18.5 2.0 36.15 9.8% 1.5% 27.8% 275 関西
サツドラHD 48.4 1.2 56.14 1.8% 1.0% 25.3% 100 北海道

スポンサーリンク
オススメの記事
オススメの記事