リユース銘柄の比較分析【2018年6月】

ご好評をいただいている銘柄比較分析のコーナーの第2回です。

今回はリユース業界を取り上げてみます。

かねてより注目されていた大型IPOとなる「メルカリ」の上場が6月19日に決まったということで、リユース業界を俯瞰して見てみようという趣旨です。

店舗を持つ従来型のリユース企業、ネット特化のリユース企業、商品を絞り込んだリユースなど、それぞれに特徴を持っています。

そして、売る方にしても買う方にしてもお世話になっているという個人投資家も多いのではないでしょうか。

そんなリユース業界について比較分析をご紹介します。

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リユース業界の比較分析

分析対象

今回の比較分析の対象は17銘柄です。

ゲオHDハードオフコーポレーションブックオフコーポレーションコメ兵トレジャーファクトリーシュッピンまんだらけパシフィックネットマーケットエンタープライズリネットジャパングループデファクトスタンダードSOU買取王国ワットマンありがとうサービス大黒屋HDテイツー

リユース業界の上場企業はほぼカバーできているかと思います。

利用データについてはページ最下部に表で掲載しています。

市場評価

まずは現在の市場からの評価としてPERとPBRを見てみます。

縦軸がPER(今期予想)です。PERの数値が大きすぎる銘柄があるので対数軸にしています。

横軸がPBR(前期実績)です。

リユース業界 比較分析 PER PBR

PERでは測れない銘柄

大黒屋HD、ブックオフ、マーケットエンタープライズは減益予想となっていることから、PERが異常値まで跳ね上がっています。

PBR評価で考えた方がしっくりくると思います。

その点では、マーケットエンタープライズは一時的な減益に留まるだろうという高い評価を受けている印象です。

高評価(割高)な銘柄

グラフの右側にあるシュッピン、SOU、リネットジャパンGは高い評価を受けています。

シュッピンは個人投資家にも人気が高く、成長株として認識されているように思います。

SOUも直近IPOとして評価が高いです。

リネットジャパンはリユース関連ではありますが、期待はカンボジア・ファイナンス事業への期待が高いのではないかと思われます。

低評価(割安)な銘柄

グラフの左下側に目を向けてみると、パシフィックネット、デファクトスタンダード、トレジャーファクトリーといった企業の評価が比較的高めです。

時価総額的には小~中規模で成長力があるとみなされているのではないかと思います。

一方で、ゲオ、ハードオフ、ブックオフ、ありがとうサービス、まんだらけといった古参企業は評価が低めです。ブックオフの苦戦がよく報じられているように、過去に実店舗のみでサービス展開していたような企業は、ビジネスの方向転換が必要な時期になっています。

自己資本利益率(ROE)

次にROEとPERで見ていきたいと思います。

縦軸がPER(今期予想)です。PERの数値が大きすぎる銘柄があるので対数軸にしています。

横軸がROEです。

リユース業界 比較分析 PER ROE

ROEがマイナスの、大黒屋HD、テイツー、ブックオフコーポレーション、マーケットエンタープライズ、パシフィックネットは前期に業績が苦戦していた銘柄です。

マーケットエンタープライズとパシフィックネットについては、PBR評価が高いことから、業績回復が期待されていると思われますが、残りの企業は見捨てられつつあります。

上記のROEマイナス企業を抜いて、残りを見やすくしてみます。

リユース業界 比較分析 PER ROE

縦軸がPER(今期予想)です。ここではPERは対数軸ではなく通常軸にしています。

横軸がROEです。

高ROE銘柄

ROE観点では、シュッピンの経営効率の良さがずば抜けています。ただし、市場からも適切な評価(PER20~30倍)を受けている印象です。

直近IPOのSOUもROEが高いです。とは言え、シュッピンと比べると見劣りすることから、PER評価は行き過ぎの印象もあります。直近IPOで人気化していることが要因と思われます。

実店舗を展開している企業の中では、ゲオHDとトレジャーファクトリーが比較的ROEがの高い経営を行っています。

低ROE銘柄

SOUのライバルであるコメ兵が意外とROE低めです。好財務である反面、経営効率としてのROEで図るとイマイチということになります。

その他、ハードオフコーポレーション、買取王国、ありがとうサービス、まんだらけは低ROEグループに属しており、PER的にも評価が低い状態です。

在庫回転率

リユース業界では特に重視されそうな在庫回転率について見てみます。

在庫回転率とは、売上高を在庫で割った指標であり、在庫(=商品)がどれだけ回転(=仕入れて販売)できているかという意味です。

リユース業界は、買取→販売をどれだけ繰り返せるかという勝負であり、この観点で比較してみたいと思います。

リユース業界 比較分析 PER 在庫回転率

縦軸がPER(今期予想)です。PERの数値が大きすぎる銘柄があるので対数軸にしています。

横軸が在庫回転率です。

尚、ゲオHDはレンタル事業の売上を抜いて計算しています。

在庫回転が早い銘柄

グラフ右側のマーケットエンタープライズとリネットジャパンが飛び抜けています。

両者はネット専門であり、在庫量が小さく、買取→即販売することで回転が早くなっています。

デファクトスタンダードも同様ですが、少し回転率が落ちます。

健闘しているのは、ゲオHDとありがとうサービスです。両者とも実店舗ビジネスがメインですが、シュッピンと同程度の回転率となっています。特にゲオHDは規模が大きいにも関わらず高回転しており、販売力の強さがうかがえます。

在庫回転が遅い銘柄

グラフの左側のまんだらけが飛び抜けています。

まんだらけは商売柄、マニアックな商品を在庫として持っておいて、欲しい人が現れたら売れるということから、回転は遅いのだろうと推察します。

ハードオフコーポレーションや買取王国もROEに続いて、在庫回転率でも低評価となります。

コメ兵やSOUもイマイチですね。高額なブランド品を扱っていることから回転は遅くなるのかもしれません。

リユース個別銘柄ピックアップ

以上の比較分析から、期待の銘柄をピックアップしたいと思います。

成長銘柄

やはり「シュッピン」が強いという印象です。すでに個人投資家にも人気が高く、PER20~30倍の適切な評価を受けていますが、今後も成長に伴って株価も右肩上がりとなりそうです。

リネットジャパン」「マーケットエンタープライズ」も、ネット専門であるため在庫回転率が早く、成長を見込む評価となっていると思います。ROEが低いのが難点で、売上だけでなく、利益をどれだけ伸ばせるかに注目です。

割安成長銘柄

ROEと在庫回転率で見ると「ゲオHD」は古参企業の中では飛び抜けており、新興企業とも戦えるだけの力を持っていると思います。

ゲオHD傘下のセカンドストリートは、ファッションリユースではトップシェアであり、店舗を拡大し、売上を伸ばしているため、今後も安定して成長できそうです。

過去の主力事業であるDVDレンタルが斜陽とはいえ、赤字からは程遠く、今後もキャッシュを稼ぎ続けると思われます。

そのため、ゲオHDがPBR1倍まで売り込まれている現状は割安感が強いです。

割高銘柄

SOUがシュッピンと同程度に評価されるのは違和感があります。コメ兵よりは少し良いという程度であり、上場直後の割高感があります。

また、ブックオフコーポレーションは業績低迷・前期赤字ということからも、PBR1倍割れに落ちる可能性はあると思います。

まとめ

比較分析の第2回目としてリユース業界を取り上げてみました。

前回の食品スーパー業界は31銘柄と数が多すぎましたが、今回のリユース業界は17銘柄ということでこれぐらいが丁度よいかなと思いました。

それにしてもシュッピンの強さが光りましたね~。

リユース業界は全体的にメルカリに押されるという印象で評価が低めとなっていますが、SOUやゲオHDは経営力も高く、まだまだ戦えるのではないかとも思いました。

メルカリはIPO熱で高騰しそうですが、個人投資家としては、割安感のある銘柄を冷静に拾っていく方が実利があるのではないでしょうか。

利用データ

2018年6月1日時点の数値を用いています。

PERは今期予想(yahooファイナンス)です。

PBR、ROEは前期実績値です。

グレアム係数は、PER×PBRです。

在庫回転率は、前期の売上高を前期の在庫平均で割っています。在庫については決算短信のB/Sにおける「商品」の数値を使っています。尚、ゲオHDはレンタル事業の売上を抜いて計算しています。
※計算式:前期売上高/((期初在庫+期末在庫)/2)

銘柄名から本ブログの個別分析のページも確認いただけます。

銘柄 PER PBR グレアム係数 ROE 在庫回転率 時価総額
ゲオHD 16.16 1.03 16.64 9.2% 8.34 750
ハードオフコーポレーション 17.41 1.12 19.5 4.3% 4.7 153
ブックオフコーポレーション 83.45 1.27 105.98 -6.5% 6.27 183
コメ兵 18.29 1.16 21.22 5.8% 4.35 225
トレジャーファクトリー 15.21 2.15 32.7 9.1% 6.19 87
シュッピン 28 8.1 226.8 27.9% 8.35 350
まんだらけ 9.89 0.63 6.23 6.6% 1.4 45
パシフィックネット 31.05 2.57 79.8 -0.3% 7.93 47
マーケットエンタープライズ 130.18 4.17 542.85 -2.1% 16 38
リネットジャパングループ 39.48 6.82 269.25 9.6% 16.82 53
デファクトスタンダード 24.92 2.36 58.81 9.5% 10.5 84
SOU 28.12 7.83 220.18 17.5% 5.84 340
買取王国 20.86 0.76 15.85 3.9% 5.08 14
ワットマン 20.11 0.75 15.08 8.1% 6.07 17
ありがとうサービス 10.51 1.25 13.14 6.7% 9.07 24
大黒屋HD 285.71 1.48 422.85 -20.3% 5.47 62
テイツー 26.09 1.37 35.74 -30.5% 7.81 26
平均 47.38 2.64 123.68 3.4% 7.66 147
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