食品スーパー銘柄の比較分析【2018年5月】

普段は個別銘柄について会社の概要や個人投資家ブログの意見をご紹介していますが、今回新たに「比較分析」というコーナー(カテゴリー)を作ってみました。

1つ1つ個別銘柄を見て良し悪しを判断するのも良いですが、視点を変えて、同業他社と横並びで良し悪しを見てみようという趣旨です。

記念すべき第1回は、食品スーパーです。

日本各地を地盤とした食品スーパーがあり、ドラッグストアも含めて群雄割拠の様相です。

熾烈な競争を繰り広げているため成長力は乏しいものの、毎年地味にキャッシュを稼ぎ続けるディフェンシブ銘柄でもあります。

多くの食品スーパーは自社スーパーの割引券を株主優待としていたり、実生活でいつも利用しているという身近さもあって、個人投資家にも人気の高い業界です。

そんな食品スーパーについて比較分析をご紹介します。

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食品スーパー比較分析

分析対象

今回の比較分析の対象は31銘柄です。全国各地の食品スーパーをセレクトしていますが、ぬけもれはありますのでご了承下さい。

利用データについてはページ最下部に表で掲載しています。

市場評価

まずは現在の市場からの評価として、PERとPBRを見てみます。

縦軸がPERです。純利益(EPS)に対して、上に行くほど高評価(割高)、下に行くほど低評価(割安)と考えられます。

横軸がPBRです。資産(BPS)に対して、右に行くほど高評価(割高)、左に行くほど低評価(割安)と考えられます。

比較分析 食品スーパー 割安度

高評価(割高)な銘柄

ここで1つだけ上に飛び出て見えるのが「いなげや」です。業績不振に加えて減損損失により利益が目減りしている一方で、無借金経営で営業CFもしっかりしているため、PER的割高&PBR的フェアバリューといった評価と思われます。

また、右上に集まっている「ジャパンミート」「大黒天物産」「イズミ」「ヤオコー」は業界の勝ち組であり、PER/PBR的に高い評価を受けていることが分かります。比較的時価総額の小さい「ジャパンミート」と「大黒天物産」を押し目で狙っていく戦略はありだと思います。

最後に、左上にある「オークワ」「ヤマザワ」は、直近で減益であるためPERが上昇してしまっていますが、PBR的には1倍割れの水準です。それほど期待は高くないが、利益を落としたことで結果的にPERが割高な水準になってしまっていると思われます。

低評価(割安)な銘柄

非常に低評価(割安)な銘柄としては、左下方面にある「PLANT」「ダイイチ」「マックスバリュ東海」「天満屋ストア」「エコス」です。

※表に記載したグレアムのミックス係数で見てもOKです。

「PLANT」は今期の特別利益の影響も大きいですが、それを除いてもまだ低評価(割安)な範疇です。

それぞれに、低成長であることや、財務的に問題があること等の理由があると思われますが、それを解消できそうな銘柄は今後の割安成長株となる可能性もあるので、検討に値すると思われます。

自己資本利益率(ROE)

次にROEとPERの関係を見ていきたいと思います。ROEは最近特に注目されている指標であり、効率的に利益を稼いでいるかという観点から評価していきます。

※グラフの見やすさのため、PERが異常値な「いなげや」は除いています。

比較分析 食品スーパー ROE

パッと見、ROEが上がればPERが下がるという直感的ではないグラフになっています。

しかし、左上グループ、真ん中グループ、右下グループと別々に考えれば分かりやすいと思います。

分割してみます。

比較分析 食品スーパー ROE

真ん中グループは、ROEが上がればPERも上がるという直感にあった感じになりました。

特に、「イズミ」「ヤオコー」はROE的に優秀で、それを十分評価してPERも高いと考えられます。また、「ジャパンミート」「大黒天物産」はROEはそれほどでもないが、PER的に評価されていると言えます。小型であることや将来的なROE向上を見込んで先回り評価でしょうか?

それでは問題の、左上グループ、右下グループについて考えてみます。

左上グループ(ROEは低いけれど高PER)

ここに属するのは「オークワ」「ヤマザワ」「東武ストア」「関西スーパーマーケット」「USMH」です。

利益が伸び悩んでいるものの、自己資本が厚く財務的に問題のない銘柄ばかりです。

つまり、食品スーパー銘柄(ディフェンシブ銘柄)として、多少の利益低下では株価が揺らがないため、結果的にPERが高めになっていると考えられます。

赤字になれば資本が目減りするため株価も下落すると思われますが、黒字を確保できている間はPERは無視されてPBRで評価されると考えた方が良いかと思います。

右下グループ(ROEは高いければ低PER)

ここに属するのは「PLANT」「G-7ホールディングス」「大光」「エコス」です。

ROEが高まる要素として、自己資本が小さいことも影響しますが、それに該当するのが「大光」と「エコス」です。自己資本比率が低いながらも利益成長させているため高ROEとなっています。

ROEが改善しているのに株価評価が追いついていないと考えられるのが「PLANT」と「G-7ホールディングス」です。この2社は財務的にも健全であり、直近で利益を伸ばしている割安成長株だと思います。ただし「PLANT」は今期予想利益が特別利益である点には要注意です。

営業利益率

食品スーパーは薄利多売の商売であり、営業利益率が利益を大きく左右します。まさに0.1%の利益率向上のためにしのぎを削っていると言っても過言ではありません。

ということで、営業利益率の確度から食品スーパー業界を見てみたいと思います。

※グラフの見やすさのため、PERが異常値な「いなげや」は除いています。

比較分析 食品スーパー 営業利益率

左上のグループはROEのときとほぼ同じですね。

真ん中グループでも、やはり、「イズミ」「ヤオコー」の優秀さが目立ちます。加えて「ベルク」「北海道イオン」「アクシアルリテイリング」「ハローズ」なんかも営業利益率4%程度の優良企業と言えます。

そして特に目立つのが「サンエー」です。これは食品スーパー以外の事業も行っている影響もあるとは思いますが、沖縄の絶対的王者として君臨しているが故の営業利益率だと思われます。

PERが低い方では、ROEのときと同じく「G-7ホールディングス」「エコス」がなかなか良いです。「ダイイチ」も健闘していますが、「PLANT」の営業利益率は低いですね。

食品スーパー個別銘柄ピックアップ

以上の比較分析から、期待の銘柄をピックアップしたいと思います。

安定成長株

「イズミ」「ヤオコー」「サンエー」は、業界の勝ち組として安定感バツグンです。

次点として「ジャパンミート」「大黒天物産」です。上記3社よりはROEや営業利益率の面で劣っていますが、小型であるためさらなる成長が見込めるからか高PERに評価されています。

この5社に関しては押し目買いが期待され、株価は右肩上がりを続けそうです。

割安成長株

ROEや営業利益率が優秀ながら株価が割安に放置されているのが、「G-7ホールディングス」「エコス」「大光」「PLANT」です。

ただし、「大光」は財務がかなり脆弱であること、「PLANT」は特別利益による嵩上げが大きいことには注意が必要です。

「G-7ホールディングス」と「エコス」に関しては、個人投資家からの注目も高まっており、今後の利益成長と割安訂正が見込める銘柄なのではないかと思います。

割高株

あえてあげればですが。

PERが異常な高さにある「いなげや」、ROEや営業利益率が低く苦戦している「ライフコーポレーション」「USMH」あたりは、時価総額も大きいこともあってショート(空売り)で対応しても良いのではないかと思います。

まとめ

比較分析の第1回目として食品スーパー業界を取り上げてみました。

ちょっと数が多すぎて言及できていない銘柄も多いですが、その辺は可もなく不可もなくということで。

やっぱり良い銘柄は高い評価されているんだな~という感じです。

一方で、割安ながらちょっと良くなってきたかも?という銘柄が個人投資家の狙い目でしょうか。

今後も時々は比較分析をアップしていきたいと思いますので、乞うご期待!

利用データ

地盤によって北から南へと並べてみました。数値は5月20日時点であり、今期の予想数値を使っています(PBRは実績)。市場評価(割安度)

銘柄名から本ブログの個別分析のページも確認いただけます。

銘柄 PER PBR グレアムの
ミックス係数
ROE 時価総額 営業利益率 地盤
イオン北海道 17.9 2.01 35.98 11.2% 864 4.6% 北海道
アークス 16.6 1.24 20.58 7.5% 1,708 2.8% 北海道・青森・岩手
ダイイチ 9.6 0.81 7.78 8.4% 86 3.4% 北海道
ヤマザワ 41 0.67 27.47 1.6% 198 1.1% 山形
PLANT 3.75 0.61 2.29 16.3% 109 1.5% 北陸
アクシアルリテイリング 16.5 1.83 30.2 11.1% 997 3.9% 新潟
アルビス 14.9 1.28 19.07 8.6% 339 3.7% 北陸
ジャパンミート 24.7 2.44 60.27 9.9% 562 3.8% 茨城
ヤオコー 20.9 2.74 57.27 13.1% 2,393 4.0% 埼玉
ベルク 18 2.12 38.16 11.8% 1,240 4.4% 埼玉
マミーマート 14.4 1.01 14.54 7.0% 267 2.8% 埼玉
スーパーバリュー 14.5 0.93 13.49 6.4% 60 0.6% 埼玉・東京
エコス 8.1 1.61 13.04 19.9% 222 3.2% 東京
東武ストア 35.2 0.93 32.74 2.6% 194 1.4% 東京・埼玉・千葉
いなげや 73.1 1.58 115.5 2.2% 948 1.4% 東京
USMH 30.9 1.5 46.35 4.9% 1,941 2.0% 首都圏
ライフコーポレーション 19.5 1.87 36.47 9.6% 1,515 1.5% 首都圏・近畿
G-7ホールディングス 11.8 1.91 22.54 16.2% 364 3.8% 関東・中部・関西
バローホールディングス 15.6 1.25 19.5 8.0% 1,449 2.6% 中部
大光 16.8 2.81 47.21 16.7% 119 1.5% 中部
マックスバリュ東海 13.5 0.91 12.29 6.7% 441 2.4% 静岡
平和堂 14.4 1.06 15.26 7.4% 1,529 3.2% 滋賀
関西スーパーマーケット 29.4 1.14 33.52 3.9% 383 1.6% 兵庫・大阪
オークワ 41.5 0.64 26.56 1.5% 504 1.2% 和歌山
ハローズ 16.3 1.87 30.48 11.5% 542 4.0% 広島・岡山
天満屋ストア 14.2 0.89 12.64 6.3% 157 3.4% 岡山
大黒天物産 27.4 2.53 69.32 9.2% 843 3.2% 岡山
リテールパートナーズ 19.6 1.17 22.93 6.0% 724 2.5% 中国・九州
イズミ 20.5 2.72 55.76 13.3% 4,981 5.0% 中四国・九州
フジ 14.3 1.04 14.87 7.3% 874 2.7% 四国
サンエー 18.7 1.68 31.42 9.0% 1,849 7.5% 沖縄
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